本作品の目的は、デジタルアーカイブ資料を用いた教材と多様な教育情報を機械可読性の高い形で接続・構造化するLODモデルを構築することである。
そのために、S×UKILAM(スキラム)連携の教材アーカイブデータ[*]を用いたRDFデータセット「S×UKILAM(スキラム)教育メタデータLOD」とSPARQLエンドポイント「Snorql for 教育メタデータ」[**]を開発した。
データモデル設計の特徴として、対象とするメタデータが教材に対して付与されていることを考慮し、活用されているデジタルアーカイブ資料ではなく教材自体をハブとしたオントロジーを設計したことが挙げられる。また、対象教材に複数のメタデータが付与されていることを活かすため、それらを他の教材や外部コンテンツと接続しやすい構造にした。これにより、他の教材やメタデータからの検索が容易になると共に、セレンディピティの創発にも繋がると考える。
その結果、教材98点から2万件を超えるトリプルを構築し、公開することができた。
本作品におけるLODの利点を活かした活用例として、学習指導要領コードを媒介とした教材や関連情報の検索が可能となったことが挙げられる。
「学習指導要領LOD」との関連付けを行ったことで、アプリケーション上で「学習指導要領LOD」のURIを介して教材に関する指導要領の説明文の情報を取得できるようになった。
これにより、指導要領の内容から教材を検索することや、同じ指導要領項目でも異なる視点や学習デザインで制作された教材を発見することが可能になった。
同様に、学習指導要領コードが付与されているNHK for schoolの情報も取得できるようにしたことは学校現場の需要に応えるという点で有用性が高いと考える。
また、ジャパンサーチ利活用スキーマとの関連付けも行なったことで、キーワードをもとにジャパンサーチ上のデータや資料をはじめ、多様な情報を紐付けて教材検索を行うことも可能となった。
一方、SPARQLエンドポイントを使用するには専門的な知識が必要となる。この課題を解決するために、LOD化したデータを簡単に検索でき、かつデータのつながりを可視化するアプリケーションの開発も合わせて行った[***]。
これらの結果は対象データセットをLOD化した利点を示すものであり、本作品の提案手法により、各地の多様な文化資源を学習指導要領などのカリキュラムや様々なWebコンテンツ及び教育情報に紐付けた検索が容易となった点に意義があると考える。
以上より本作品は、教育の情報化とデジタル文化資源の活用促進に貢献するデータモデルの一例を提示することができたと考える。今後はデジタル教科書などとの接続を検討する。
[*]「S×UKILAM(スキラム)連携の教材アーカイブ」
https://adeac.jp/adeac-lab/top/SxUKILAM/index.html
[**] SPARQLエンドポイント「Snorql for 教育メタデータ」
https://sukilam-educational-metadata.github.io/snorql/
[***]「S×UKILAM LOD Easy アプリ:らくらく検索で繋がるわくわく」
https://w3id.org/sukilam-educational-metadata/app/